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社会的インパクト投資の「リターン・リスク」(入門編)

事業レポート

社会的インパクト投資の「リターン・リスク」(入門編)

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社会的責任投資、社会的投資、社会的インパクト投資(またはインパクト投資)など、色々な投資概念が昨今紹介されていますが、手の届かないような壮大な投資のお話から、クラウドファンディングなどの技術を通して身近に感じられるような投資のお話も増えてきたかと思います。こうしたところからも、社会的インパクト投資がそう珍しくないものになってきたことを実感します。

さて、色々な情報がある中で「社会的インパクト投資初心者」の方でもきっとご存知なのは、従来の投資では「リターン」と「リスク」は必ずつきものということでしょうか。今回は、そんな「リターン」と「リスク」についてのお話です。

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(Photo credit: DnB Partners)

まず、リターンとは自分が投入した資金に、更に上乗せして戻ってくる見返り、対価、もしくは「戻り」のことです。
そして、リスクとは、自分が投入した資金の行方・将来の結果に対する「不確かさ」のことです。(慎, 2009)
従来の投資では、そのリターンを金銭的/経済的リターンの度合い、そしてリスクを金銭的/経済的損失の不確かさの度合いで見られています。

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(Photo credit: Wharton)

さて、社会的インパクト投資では、ご存知の通りリターンとリスクはそこから更に二つに分けられています。
リターンでは「経済的リターン」と「社会的リターン」。
社会的な成果をもたらす事業に資金(もしくは「志金」)を投入し、そこで得られる見返りは、その社会的な成果をもたらした事業が出した経済的利益から出てくる「経済的リターン」。そしてもう一つ投資家に戻ってくるのは、社会の状況が改善したという成果・事実(「社会的リターン」)。

なかなか経済的リターンが市場利益率と同等にはならず「譲許的リターン」とみなされることから、投資家・投資ファンド側からは「社会的リターン」はその分の付加価値的な存在として見られていたこともありました。しかし、最近では 絶対的な存在として「インパクトリターン」 “impact return”と呼び始めている団体が増えてきました。

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(Photo credit: Symplectic)

「社会的インパクト投資」には、従来の投資がもたらす (1)「経済的リターン」だけでなく、 (2)インパクトリターンとして、二つのリターンが求められます。

様々な文献や産業報告書などでは殆どが「社会的リターン」としていますが、英国のBig Society Capitalや豪州の数々のインパクト投資家、投資ファンドでは、「インパクトリターン」という言葉をより多く使うようになってきました。
そして、それらの団体が口を揃えていうのが”No impact, No investment”(インパクトがない限り、投資はしない)という言葉です。
もちろん、投資をする前にはインパクトがもたらすという確実性は立証できませんが、まさにそれが上で述べた「リスク」=「不確実さ」ということです。
この新しい概念である「社会的インパクト投資」には、従来の投資がもたらす (1)「経済的リスク」だけでなく、 (2)インパクトリスクとしても分けられるのです。
この (2)インパクトリスク、というのは「社会的なインパクトがもたらされること」に対する「不確実さ」ということです。

つまり、「社会的インパクト投資」から「社会的インパクト」の文字を取ると、ただの「投資」になってしまうのと同じように、インパクトがもたらされなければ、これは社会的インパクト投資ではなく、ただの従来の「投資」にすぎないことに対するリスクでもあるのです。

社会的インパクト投資家として投資をし、経済的に「儲けた」としても社会的インパクトがもたらせなければ、それはただの市場投資にすぎません。
従来の投資とは違い社会的インパクト投資にしかもたらせない2つのリターンとリスク。それがまた社会的インパクト投資の大きな魅力なのかもしれません。

 

【参考資料】

●慎泰俊, 2009「15歳からのファイナンス理論入門」ダイヤモンド社

●Personal interviews with
• Simon Rowell and Camille Parke from Big Society Capital (UK)
• Daniel Brewer from Resonance UK Ltd (UK)
• Daniel Fitzerald from Small Giants (AUS)
• Andrew Tyndale from Grace Mutual (AUS)
• John McKinnon from John McKinnon Foundation (AUS)
• Daniel Madhavan from Impact Investing Australia (AUS)
• ARUN Partners (JAP)

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