クラウドファンディング
スマホ、Facebookなどソーシャルメディアが発達・普及してからほぼ当たり前のように使われ始めている「クラウドファンディング」。ARUNでも以前Impact Reportの作成に際して使わせて頂いた資金調達の手法です。実はそんなクラウドファンディングは、8年前に全世界を大きく揺るがした2008年の世界金融危機(GFC)がもたらした副産物ともいわれています。
クラウドファンディングとは、「クラウドソーシング」という、インターネットを駆使し、不特定多数の人のサービス・アイディアなどを募る方法から来た言葉です。もともと、クラウドソーシングという言葉はWired Magazineの編集者Jeff Howeが2006年に「クラウドソーシングの台頭」という記事をWired Magazineで発表した時に使用したことから、注目を集めました。そして有名な米国のKickstarterや、日本でも「クラウドワークス」や「ランサーズ」などとクラウドソーシングの会社が次々と登場していきました。
2008年のGFCを目途に、金融機関と消費者の間にあった「信用力」が低下していきましたが、それと同時に情報技術を使った新たな金融サービスが登場したのです。それが最近よく聞く「フィンテック」。普段毎日当たり前のように使っているスマホなどの情報技術を駆使して金融サービスを作り出すこの動きは、金融業界の”破壊的”イノベーションとも呼ばれ、既存のサービスより更にユーザー重視に考えられたサービスを生み出しています。(タクシー業界のUberや観光・宿泊業界のAirBnBも”破壊的”イノベーションと言われています。)
フィンテックは従来の金融機関が成しえないことをインターネット上で次々と成し遂げていくことに成功。モバイルアプリを使った無料送金や海外送金、それから生まれたのがクラウドファンディングです。もちろん、GFCより前に2005年にイノベーションを起こした米国生まれのKiva(インターネットを使って発展途上国の事業主・起業家への融資をするサービス)などがありますが、日本のReadyForやオーストラリアのStartSomeGoodなどをはじめ、Crowdfundingは急速に広まっていきました。
日本ではNPOやベンチャー企業など様々な団体が資金を集めるために使う「寄付型」や「購入型」クラウドファンディングがありますが、このクラウドファンディング、皆さんは世界でどれほどのお金がこの市場に眠っているかご存知ですか。
全世界から絞り込んだ、1250からなる「現役」クラウドファンディング会社を対象にコンサルタント会社が研究した2015年のクラウドファンディング産業報告書によると、2010年には800億円ほどだったこの市場は4年後の2014年には1.6兆円までに増え、翌年の2015年には約3兆円へと倍増したのです。これは以前お話ししたイスラム金融市場規模(200億ドル)とほぼ同等であることがわかります。
皆さんの身近にあるスマホ・アプリなどを使って、いとも簡単に資金調達ができるようになったこの時代。インターネット上で人の心を動かし「投資」・「寄付」してもらうのはまだまだ難しいことですが、私たちの生活・事業の仕方をこれからも変え続けていくことは間違いないでしょう。
参考文献:
• Andreessen, 2015 “Why Software is Eating the World” The Wall Street Journal, August 20 http://www.wsj.com/articles/SB10001424053111903480904576512250915629460.
• Barnett, 2015 “FinTech Investments Quadruple: Top Trends to Watch” http://www.forbes.com/sites/chancebarnett/2015/07/22/fintech-investments-quadruple-top-trends-to-watch/
• Brandon, 2015 “Summary of FinTech Service” http://blog.btrax.com/jp/2015/12/21/fintech-2/
• Massolution, 2015 “2015 Crowdfunding Industry Report”
• Scholz, 2015, The Relevance of Crowdfunding: The Impact on the Innovation of Small Entrepreneurial Firms, Manchester, Springer Gaber.