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難民危機と社会的投資の可能性

事業レポート

難民危機と社会的投資の可能性

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Big Society Capital (銀行の休眠資産を使ってソーシャルセクターで活動する団体に資金調達支援をする英国の中間事業者)が社会的投資を使って、欧州難民(移民)危機対応を試みることを2016年5月初旬に発表しました。

2015年の欧州難民(移民)危機から約半年以上の年月が経った今もあのニュースを皆さんも覚えていると思います。母国での戦争から逃れるため祖国を離れる大きな決心をされたアフリカ、中東諸国から移民および難民が欧州諸国へ庇護を求めたものの、移動した船が地中海で沈没し1000名以上の犠牲者を出した事故。また、欧州諸国への入国管理においても社会的・政治的に世界中から大きな反響を呼びました。

2012年までは1200万人程度とされていた世界中の難民数が2年後の2014年には5950万人と倍以上の増加となり、第二次世界大戦以降最多と言われています。庇護を求める世界最大の難民グループであるシリア人 (400万人)の大半は車などを使って地理的に辿り易いトルコやヨルダンなどへ逃れていますが、近年は船・飛行機を使っての欧州諸国への難民申請も増えました。2014年以降の欧州での難民受入国はフランスが最多で、次にドイツ、スウェーデン、そして四位が英国です。熊本震災のように、人々の安全確保のみならず各国政府の予算配分も厳しいのが現状です。

この難民危機に着目し社会的投資を試みている国の一つが英国です。現在17万人程度の「国連に認められた難民」と「難民申請者」が英国内に居住しています。彼らには新しい環境でのサービスやシステムの違いなど、私達でもきっと一度は経験した「壁」が待っています。更に、戦争から逃れた人々の安全だけでなく「安心」を確保するには雇用・居住地確保や言語・文化の壁への対処も必要となります。

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(参照:Big Society Capital, 2016)

再定住に関わるそういった重要な課題に対し、急なサービス量の増加が必要とされますが英国政府予算だけでは対応不可能なため、あらゆる言語教育や雇用促進などのサービスを行う団体に対しBig Society Capitalが資金調達支援を行うことで、国家予算だけでは賄えない部分に社会的投資を使うことを2016年5月初旬に発表しました。紛争などで親族を亡くし深い傷を負った難民は、自国では医者・教師・弁護士などキャリアがあった人が殆どでしたが、そんな彼らの安全・安心を確保し自身を取り戻しイギリスにも貢献することができます。

現時点で考えられている支援内容は以下になります。

1. 住宅確保

到着したばかりの難民に対して住宅確保のため、住宅ファンドを掲げ、手頃な価格の住宅地を所有し貸し出す。内務省、機関投資家や英国国際開発省などからイクイティ投資を募集中。(Cheyne Capitalファンド会社がプロパティファンドを立ち上げ、210世帯と120人に対し住宅確保を目指した既存モデルがある)

2. 起業支援 

起業をしたい難民のための起業支援を行う。ベンチャーファンドや移民投資家などからの寄付とリスクキャピタルを募集中。

3. 移民アクセスファンド

祖国で弁護士や建築家などキャリアのあった人のみを対象に英国のシステムに合った訓練・教育を供給するファンド。資格取得へと繋げるため、個人富裕層の投資家や銀行などから2-3年のローンを募集中。

4. 雇用のための社会的インパクト債

新しい環境に着たばかりの難民にはない雇用確保のためのネットワークを、キャリアを積んできたネットワーク豊富な英国在住の老人とコラボし、雇用促進をはかる。労働年金省や財団などからアウトカムベースの資金を募集中。

5. 法律相談ファンド

難民として認められておらず、無料の弁護相談へのアクセスがない難民申請者を対象にした高品質の法律上の助言サービスを使用可能にすることが目的。法律事務所や機関投資家から短期的資本金を募集中。(これに似た案件として、米国のJustice Investorが現在、社会正義のためのクラウドファンディングを使った投資モデルを開発中。)

6. 地域主導の再定住

再定住にまつわる医療や雇用などの課題解決に向け、地域主導型の再定住支援を計画。内務省や個人富裕層の投資家からグラント・ローン(社会的投資減税検討中)だけでなくボランティアを募集中。(カナダや豪州では既に難民・移民の地域再定住モデルを立ちあげ地域からボランティアを募り再定住支援をしている。)

社会的投資を利用することで色々な問題も浮上するかもしれませんが、国際的な大きな課題が各国家予算だけでは賄えない今、こうして民間からも手を差し伸べられサービスの量・質が増えることは前向きなことですね。

ARUN Seed メンバー小野 綾

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