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新興国で進む社会的インパクト投資

事業レポート

新興国で進む社会的インパクト投資

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7月9日にイギリスのロンドンにて
G8 Social Impact Investment Taskforce の総会が行われました。

その中で紹介されていた非常に興味深いのが、
G8の枠組みを超えた新興国を交えて進む社会的インパクト投資。

そこでは、アメリカ、イギリス、イタリア、オーストラリア、
カナダ、ドイツ、日本、フランス、ドイツ、EU代表らが
自国の現状報告、課題、アクションについて発表しました。

日本からは国内諮問委員会を事務局とする日本財団の大野修一常務がご登壇。
5月後半に開催された日本での社会的インパクト投資シンポジウム
(当社ARUNの代表理事功能聡子も登壇致しました。)の話や
日本での社会的インパクト債の3つの実験的案件、
休眠預金活用の法案可決が今年中に期待できるということなど、
様々な前向きな報告がされました。

その他、オーストラリアでは、民間の銀行( National Australia Bank )が
AU$100 万ドル(日本円約 9000 万円)の Impact Investment Readiness Fund を
社会的起業家のために立ち上げたり、
ドイツでは既存の財団が資金を増やしたり、
イタリアでは知識基盤の強化のためにミラノ大学で
社会的インパクト投資研究センター設立を企画中など、
世界各地で前向きな動向が見られました。

今回の総会では、G8諸国を越えた連携として、新興国の代表のイスラエル、
インド、ブラジル、ポルトガル、メキシコの5か国が自国の発表をしました。

今回は世界中で起きている社会的インパクト投資の取り組みの一部を簡潔に紹介します。

イスラエル
イスラエルは大まかに、75% がアラブ、21% がユダヤ人などから成り立つ国で、
GDP は一人当たり約 $40,000 ほど。
イスラエルではイギリスで設立されたソーシャルファイナンス中間団体
Social Finance のイスラエル版、Social Finance Israel が 2013 年に設立され、
社会的インパクト投資の動きが高まっています。

中でも、イスラエル政府による社会的起業家のためのファンド
Yozma Social Funds は 600 万米ドル、今年9月にはイスラエル最初の社会的インパクト債が
2件(2型糖尿病防止と学校中退防止)開始されます。

新しい分野であることから国内でも各セクターが
お互いから知恵・知識を絞りながら、案件を進めているようで、
向こう二年間で社会的インパクト債を4案件に増やしたいとのことでした。

インド
多言語、多文化であり経済的急成長を遂げてきている国インドでは、
社会的ベンチャーファンドを約 5000 億から 6000 億円で立ち上げるとのことです。

これには政府からの厳しい取締りが関与されるようで、
透明性への取り組みと政府とのパートナーシップなどが示唆されていました。

また、前回ブログで紹介した開発インパクト債は、
二個目の案件として、ここインドでの教育支援があります。

2015 年 6 月に始められたこの開発インパクト債の案件は、
UBS 証券の顧客が UBS Optimus Foundation を通じて
約 2400 万円をインドの教育に特化したNGO 団体、Educate Girls に投資。

合計 2 万人の子供たちに対して質の高い教育プログラムを提供することで合意しました。

ブラジル ブラジルで目立つ社会福祉の支出はブラジルの全体GDP9%を越えると言われており、
社会的インパクト投資を資金繰りの解決策の一つとして見始めています。

2014 年 10 月に社会的インパクト投資ワーキンググループを立ち上げ、
ブラジルでの解決すべき課題の事業領域や社会的証券取引などについて話し合いました。

立ち上げてからの課題としては、従来の民間投資から
社会的インパクト投資へのマインドセットの変化がありますが、
インパクト投資のための各セクターパートナーシップを増やすことで、
より包括的な啓蒙活動もできると話していました。
今後の活躍に期待です。

ポルトガル
EU諸国の一つであるポルトガルも 2014 年の 7 月にタスクフォースを設立し、
今年の1月から国内最初の社会的インパクト債の案件が開始されました。

これはポルトガルの首都リスボンにて、選ばれた小学校で
プログラミング技術の教育を通して、
子供の問題解決能力や論理的思考力などを養う案件で、
成功した場合、プログラミング技術を公的教育に政策提言されます。

今年の 6 月にはリスボンにて、ソーシャルイノベーションワールドフォラムも開かれ、
2020 年までのビジョンである「グローバルインパクト経済」への一歩となったようです。

現在、インパクト投資の市場形成が急速に進行されていて、
国内で様々な団体から、キャパシティビルディングファンドとして
約 16 億円(向こう6年間で)、ソーシャルイノベーションファンドが約 103 億円、
ベンチャーフィランソロピーのファンドとして約 21 億円が約束されています。

こうしたファンドを基に社会的インパクト投資の
エコシステムを形成させていくのが当面の目標だそうです。

メキシコ
今回の総会でメキシコが唯一の中南米諸国として発表をしました。
実は意外と知られていない世界中のインパクト投資の資本の 11% は
ラテンアメリカに投資されていて、それは社会的起業家の
急増と市場ポテンシャルを物語っています。

メキシコの人間開発指数は現在71位で国内の所得格差を表すジニ係数では
OECD 加盟国では最下位と、不平等が強くある国とされています。

現在の社会福祉の在り方に限界があり、
社会的起業家が福祉の分野で増えているそうです。

社会的インパクト投資の分野で活動するのは13財団、
10 政府機関、民間企業が 32 社、そして、インパクト投資の取り組みを行っているのが
514 団体にものぼり、インパクト投資の市場が成長中。

社会的インパクト投資を浸透させるため、
政策提言を通して政府への働きかけをしているようです。

こういった登壇された諸国の前向きな発表のあと、
共通する課題として挙げられたのが、

  • 各セクターとのパートナーシップ
  • 使用言語とマインドセットのギャップ
  • 政府へのインセンティブ
  • 多国的機関の参入

など があがりましたが、解決策として、

  • 新しく出てくる社会的インパクト投資中間団体のキャパシティビルディング
  • 社会的インパクト投資の普遍的定義を定める
  • 透明性を高める取り組み

などが鍵となる、ということで、総会がおわりました。

今回の総会から言えることは、社会的インパクト投資のマーケットは確実に、
急速に成長中あるということです。

ARUNを含め日本国内の社会的インパクト投資浸透に取り組んでいる団体が啓蒙活動を続け、
社会的インパクト投資家を増やすためにも更に活動を本格化して参ります。

参考文献:

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